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【特集】印刷史の断層
―リソグラフがひらく本づくりの未来
長らく印刷は,均質性と再現性を理想として発展してきた。活版からオフセット,そしてデジタル印刷へと至るその歩みは,いかに正確に、いかに効率的に複製できるかという問いの積み重ねでもある。日本の出版文化もまた、著者、編集者、デザイナー、印刷所、流通、書店といった専門的分業のもと、その技術的基盤に支えられながら成熟してきた。
しかし近年、その境界は静かに揺らぎ始めている。編集やデザイン、印刷、製本、流通といった役割を横断しながら本をつくる実践が広がり、小規模で柔軟な出版のありかたがあらためて注目されている。
そうした動向と結びつくかたちで,再び注目を集めているのがリソグラフ印刷である。日本の理想科学工業株式会社によって開発されたこの印刷機は、教育現場や事務用の簡易印刷機として普及したが、2000年代以降、予期せぬかたちで海外のアーティストやデザイナーに見出され、ZINEやアートブックの制作現場で独自の文化圏を形成していった。そしていま、その文化は日本国内の動きとも響き合いながら広がりを見せている。
リソグラフ印刷は決して万能ではないが、版ズレやかすれ,色ムラといった不確かさを内包しながらも、その偶発的な表情やアナログな質感は、画一的な大量生産とは異なる価値を提示している。均質性や再現性を軸に発展してきた印刷史のなかで、不完全さや不確かさといった制作の痕跡が批評的な意味をもち始めたいま、リソグラフ印刷は、その連続性の内部に異なる価値を差し込む「断層」として位置づけることができる。
DIY的な試みから始まったこの印刷手法は、やがてZINEやアートブックへと展開し、いまではデザイン事務所やインディペンデント系出版社がオフィスに導入し、自らの手で出版を行う実践も広がっている。本特集では、こうした国内外のリソグラフスタジオやインディペンデント系出版社へのインタビューを通じて、印刷と出版の関係をあらためて問い直す。効率や均質性から距離をとる実践のなかに、これからの出版文化の可能性を探っていきたい。
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アイデア No.413(2026年4月号) | 株式会社誠文堂新光社 (seibundo-shinkosha.net)




