特集:グラフィックの食卓
本特集「グラフィックの食卓」 は,近代グラフィックデザインの文脈にある,食についての,あるいは食を足がかりにした批評的グラフィック作品をアラカルト的に紹介するものだ。
近年,グローバル化とともに(美食ではなく)文化としての食への関心が高まり,料理の世界では工学的に料理を捉える発想が深まっている。
またその一方で,アートやデザインの領域でも,食を概念装置としたプロジェクトやワークショップ,印刷物が興隆している。
これらの同時代的動向はそれぞれ独立した物では無く,高山宏の鮮やかなテーブル近代文化論が示したように「table」 が「板」 から「卓」そして「図表」 となって電子的卓文化(tabletop,desktop,tablet) が生まれていく,近代の精神史でつながっているように思われるのだ。
そして,デザインと食が食卓(テーブル) を媒介にして,互いにアナロジカルに(類比的に) つながっているグラフィックに,その構造を読み解く秘密があるのではないだろうか。
本特集は文化的活動とグラフィックデザインの実践のつながりに深い関心を寄せてきたデザイナー,研究者であるワレン・テイラーとの協働のもとで構想・制作された。
本特集を秩序立てるテーブルは,彼の関心と私の関心,二つの焦点による楕円を描いている。
非西洋圏の事例については機をあらためたいものの,本特集が正円による合理的世界観ではなく,楕円が象徴する動的で相補的な世界へ開く窓となっていれば幸いである。
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アイデア No.378 2017年7月号 | 株式会社誠文堂新光社 (seibundo-shinkosha.net)